普段は洗濯してそのまま干したシャツを着ていました。少しくらいシワが残っていてもそれほど気にならなかったのです。

ところが最近は休日にシャツへアイロンをかけるようになりました。人生も折り返し地点を迎え、若い頃とは少し様子の変わってきた自分の姿を鏡で見ていると、服装もこれまでより少し整えてみようかと思うようになったのです。身体が変わるにつれて自分の感覚も少しずつ変わってきたのかもしれません。

アイロンをかけてシワの伸びたシャツはほんのりと光沢を帯び、どこかきりっとして見えます。袖を通す人まで少し立派に見せてくれるような頼もしさもあります。

自分でアイロンをかけたのですから見た目がよくなったことは当然分かっています。それでもしばらく時間を置いてからハンガーに掛けられたシャツをあらためて眺めると、不思議と以前とは違って見えました。

そこにあるのは単に自分がアイロンをかけたシャツではありません。これから自分を支えてくれる心強い相棒のように思えてきたのです。少し大げさかもしれませんが、新しい友人が増えたようでうれしい気持ちになりました。

手をかけたことで変わったのはシャツの見た目だけではなかったのでしょう。自分とそのシャツとの関係も少し変わったのだと思います。

住まいにも同じようなところがあるのかもしれません。

日々感じている小さな不便を一つ整える。傷んだところを直す。使いにくかった場所に少し手を加える。そうしたことによって住まいそのものだけでなく、自分と住まいとの関係まで変わっていくことがあります。

新しいものに取り替えなくても、手をかけることでそれまで身近にあったものが改めて大切に思えてくることがあります。

住まいを整えることは単に不具合をなくすことではありません。今ある家との関係を結び直し、また好きになるための時間でもあるのだと思います。